翠緑のエクリ

神奈川県在中。主な関心は哲学、倫理です。

ショーペンハウアー「読書について」_読書から普遍的歴史へ

古典かつ適切な分量 2022年から友人と開始した読書会,記念すべき1冊目はショーペンハウアーArthur Schopenhauer(1788-1860)の『読書について』(岩波文庫,斉藤忍随訳)となった. 前回のエントリーの問題意識を踏まえつつ,まずは時間内に読める分量の古典か…

読書会を始めるにあたり_読書・知性・検索

SNSでの情報収集が一般化しつつある現在.便利さの一方,私たちはアルゴリズムの不可視化や情報管理のリスクとの共存が不可欠となった.現代における知性とは,読書とは.

漫画を語るのはだれか-大映博物館漫画展から考える漫画文化論

ヨーロッパで加熱する日本漫画ブームは,ついには大英博物館で漫画展が開催される程となった.芸術やクールジャパンとして語られる漫画像は,イデオロギーと無縁なのか.

【書評】アメリカの反知性主義/リチャード・ホーフスタッター

かつて社会を先導する役目を追っていた知識人は,特権階級として嘲笑される存在になったのか.アメリカの反知性主義を手がかりに,インテリゲンツィアのあり得べき姿を考える.

【書評】カント「啓蒙とは何か」-哲学と啓蒙は私たちを魅了する

短い論文ながら,理性と自由を世界史的プロジェクトへと昇華したカントの著作.啓蒙のプロジェクトは,果たしてその役割を終えたのか?その魅力と現代の意義をもう一度考える.

【感想】フランク・パヴロフ「茶色の朝」

「きっとかれは正しいのだろう。 あまり感傷的になっても仕方がないし、犬は茶色がいちばん丈夫というのはたぶん本当なんだろう。」空気を読むことの意味.寓話から読み取る全体主義への警鐘.

【感想】鋼鉄のドームの先にあるのは未来か、ユートピアかーアイザック・アシモフ「鋼鉄都市」

自然を懐古する人間と上位知能であるスペーサー.尊厳を奪われた労働者と合理的機械たち.様々な対立を媒介するロボットは,果たして友か敵か.希望的メッセージに富んだSF.

【感想】手続き的適正、普遍的知性の探偵 Q.E.D.-証明終了-(2/2)

数学,大学,演劇,政治,はては漫才から痴話喧嘩まで.トラブルシューターとして事件の解決を目指す探偵漫画Q.E.D..ベストエピソードを振り返る,後編.

【感想】手続き的適正、普遍的知性の探偵 Q.E.D.-証明終了-(1/2)

コナンや金田一等の推理漫画ブームの陰で生まれたもう一つの名作.犯人を追い詰める推理とは異なる可能性を開いた魅力を紹介.アカデミーの苦悩こそ本作の一番の魅力.

【書評】制度でも衰退でもない経済の未来(2/2)―「経済成長という呪い」ダニエル・コーエン

経済という成長という希望と解放のの物語は,「必要」からやがて「脅迫的義務」へと変化する.人口減少や資源の有限性は,私たちに別の経済社会の在り方を訴えてはいないか.

【書評】成長でも衰退でもない経済の未来(1/2)―「経済成長という呪い」ダニエル・コーエン

イノベーションを初めとする経済成長戦略は,果たして人類を幸福にするのか.技術革新の人類史から振り返る,我々の社会のネガティブとポジティブ.

【感想】持てるものが持たざる者を助ける―日本の税金(第3版)

日本の税金は本当に高い?資本主義が格差の拡大を前提とした仕組みであるとしたら,税は何のための義務なのか.日本の税法から考える.

【感想】ワールドトリガー-弱きものはヒーロー足り得るか

強さと成長を武器にする歴代のジャンプヒーローたち.自らの弱さを受け入れ,努力と工夫・チームワークで補う誠実なヒーローを描いた,未来の名作.

【書評】生きづらさを語る作法とはー「コミュ障」の社会学

かつて神経症と言われていた不登校は,フリースクール等の新たな選択肢により社会に受け入れられたかにも見える.「ダイバーシティ」,「多様性」は子どもたちを幸せにするのか.

【感想】植物による緩やかな支配と静かな絶滅ー地球の長い午後

人類は自然から捕食される存在へと退化し,緩やかに絶滅へ向かう.強大な昆虫や自然現象の中,逞しく生き残る主人公の姿から見えるものは.

【感想】センスオブワンダーと哲学的深みを持つ傑作SFーアンドロイドは電気羊の夢を見るか

魅力にあふれた数々のガジェットに溢れた世界観と,スリリングなコンゲームを通して描かれる,仮想と現実・神と機械・アンドロイドと人間の境界線.

【感想】「幼年期の終わり」から見る進歩と終焉の変奏系

そう遠くない未来に人類が迎える特異点.争いは無くなり,資源は満ち足り,人類は進化する.希望と不安,残された人類であることの矜持を描いたラストは圧巻.