翠緑のエクリ

神奈川県在中。主な関心は哲学、倫理です。

漫画を語るのはだれか-大映博物館漫画展から考える漫画文化論

漫画は芸術であるという視点 イギリスはロンドンでは2019年5月23日から8月26日にかけて、日本の漫画を主題としたThe Citi exhibition Mangaが開催された。BBCによれば、大英博物館のギャラリーのうち、1,000㎡以上の面積が会場特設として使用され、240点に及…

【書評】アメリカの反知性主義/リチャード・ホーフスタッター

インテリゲンツィア、知識人 知的であることを人間的な財産として捉える人はどれくらいいるだろうか。あるいは逆に、「知性的でない」ことをプラスのイメージで捉える人はどれくらいいるだろうか。日本では知的な人間のことを指して「インテリ」と呼ぶことが…

【書評】カント「啓蒙とは何か」-哲学と啓蒙は私たちを魅了する

「啓蒙とは、人間が自分の未成年状態から抜け出すことである。…未成年とは、他人の指導が無ければ自分自身の悟性を使用し得ない状態である。ところでかかる未成年状態にとどまっているのは彼自身に責めがある。というのは、この状態にある原因は、悟性が欠け…

【感想】フランク・パヴロフ「茶色の朝」

「なんにしても、シャルリーは俺が猫を処分した時と同じく、なにごともなかったかの様に話していた。きっとかれは正しいのだろう。あまり感傷的になっても仕方がないし、犬は茶色がいちばん丈夫というのはたぶん本当なんだろう。」(フランク・パヴロフ、「茶…

【感想】鋼鉄のドームの先にあるのは未来か、ユートピアかーアイザック・アシモフ「鋼鉄都市」

AIによる自動化が進みつつある現代 AI、そしてロボットという言葉は、近年においてその意味を大きく変えつつあります。2018年9月、自動運転レベル3(条件付き自動運転)を搭載した自動車の販売について、フランクフルトモーターショーで公開されました。アメリ…

【感想】手続き的適正、普遍的知性の探偵 Q.E.D.-証明終了-(2/2)

前半(Q.E.D.という「普遍的な知性」のミステリ)へ おススメのエピソード 先にも述べた通り、Q.E.D.‐証明終了‐は既刊50巻で一度完結し、2015年からはQ.E.D.iff‐証明終了‐として再スタートしました。2019年1月現在で、連載は通算22年、コミックス60冊・エピソ…

【感想】手続き的適正、普遍的知性の探偵 Q.E.D.-証明終了-(1/2)

イギリスの聖職者ロナルド・ノックスは、推理小説のルールとして、「ノックスの十戒」を掲げました。 曰く犯行現場に秘密の通路が二つ以上あってはならない、未発見の毒薬を犯行に用いてはならない、探偵は読者に提示していない手がかりによって解決してはな…

【書評】制度でも衰退でもない経済の未来(2/2)―「経済成長という呪い」ダニエル・コーエン

(人類史と経済成長 前半へ) 「自主的」であれという「命令」 ポストフォーディズムの労働者 しかしながら、ポストフォーディズム体制では、労働者や工場は国境を越え、反復作業は機械に任されることになります。 企業はかつて、労働者の福利と厚生を図ること…

【書評】成長でも衰退でもない経済の未来(1/2)―「経済成長という呪い」ダニエル・コーエン

はじめに 今回ご紹介するのは、ダニエル・コーエンの「経済成長という呪い」(※1)です。21世紀の資本主義社会が直面している、資源の有限性に伴う経済成長の停滞と、飽くなき成長を求める人間の欲求という矛盾を主要なテーマとした良著です。 長くなってしま…

【感想】持てるものが持たざる者を助ける―日本の税金(第3版)

仕事の勉強用に…と買ったものの、予想以上に面白かった本。 複雑な日本の税制度 日本の消費税は、1989年の竹下内閣によって導入されて以降増税を続けています。2018年10月15日の臨時閣議では、次年度以降の消費税を10%に上げる方針が表明されました。 主な…

【感想】ワールドトリガー-弱きものはヒーロー足り得るか

※この記事は一部作中のネタバレを含みます 週刊少年ジャンプの連載の「ワールドトリガー」が連載再開することが発表されました。 https://www.shonenjump.com/p/sp/1810/worldtrigger/ 2013年より連載開始した本作は、作者の体調不良を理由に2016年より休載…

【書評】生きづらさを語る作法とはー「コミュ障」の社会学

「友達幻想ーー人と人との繋がりを考える」という新書の発行部数が、30万部を超えた、そんなニュースがあります。 風の便り : 友だち幻想が売れている 2008年発売の新書が、発売から10年たって流行るという時代背景には、いったい何があるのでしょうか。SNS…

【感想】植物による緩やかな支配と静かな絶滅ー地球の長い午後

読書が趣味な人にありがちなこととして、買ったもののまだ読んでいない、あるいは最初だけ読んだものの途中で読むのを中断して積まれてしまう、いわゆる「積み本」という現象があります。 最初に購入した際に抱いていた期待が、どうやらその本からは簡単に引…

【感想】センスオブワンダーと哲学的深みを持つ傑作SFーアンドロイドは電気羊の夢を見るか

SF小説の定義には諸説あります。古いものでは、1948年頃にロバート・A・ハインラインが私信で「ScientiFiction」という用語を使用しているようです(※1)。 アメリカではポップカルチャーや低予算B級映画との関連付けが強調された時期もあり、サブカルチャー、…

【感想】「幼年期の終わり」から見る進歩と終焉の変奏系

人類の未来の到達点を描いた「幼年期の終り」 『幼年期の終り』(Childhood's End)はイギリスのSF作家、アーサー・C・クラークの長編小説です。発表は1953年。クラークの代表作として、SF史上の傑作として、現在でも広く愛読されています。 導入のあらすじ…